【13オピニオン面】
唄いつぐ−親から子へ
子供の眠る瞬間見る至福
評論家 大宅映子(1)
ねんねん ころりよ
おころりよ
○○ちゃんはよい子だ
ねんねしな
ねんねのおもりは どこへ行った
あの山こえて 里へ行った
里のおみやに なにもろた
でんでん太鼓に 笙の笛
私のうたった子守唄は、定番の『江戸の子守唄』である。私の父、壮一は大阪府出身、母、昌は富山県出身。私自身は母から子守唄を歌ってもらった記憶はないので、この子守唄は、私がどこかで仕入れたものだと思う。
2人の娘(現在39歳と34歳)を育てる間、寝かしつけるときは、ほとんど毎晩のように、歌った。乳児用ベッドに寝かせて、お腹のあたりを手でトントンと叩きながら、
ねんねんころりよーッオッ、
おころりよーオッ
ねんねしなーアッ
と尾ヒレをつけて・・・。
私は大学を卒業してから、長女の出産前後1年半ほどを除いて、ずっと仕事をしてきたが、子供が成人するまでは、母親の仕事が優先順位の1番と決めてきた。夕食をつくれないような仕事はしない。子供が就寝するときには必ず居るetc。つまり子守唄が必要な
時期には必ず子供と一緒だった。
育児が負担だという人は多い。負担ではないとは言わないが、その負担よりも何倍も多いものを授けてくれる。サムシング・スペシャルが育児にはある。いのちをはぐくむチャンスを与えてもらった、ということを考えたらちょっと手間がかかるなんて、めじゃない。
世の中には幸せはいっぱいあるけれど、私は、ぐずっていた幼子が、子守唄を歌ったり、リズムに合わせてゆすったりしているうちに、だんだんと目がトロンとしてきて、ついに眠りに落ちた瞬間、自分の腕の中で安心し切った小さないのちが、すーっと眠りの世界に入ったナと感じるあの一瞬、あれ程の幸せはないと思っている。
娘たちは、7、8年の会社勤めの後、良い伴侶にめぐり会い、それぞれ1人ずつの孫娘がいる。私としては、いのちをつむいだという満足感でいっぱいだ。
ところが、先日、子守唄の話になったら、娘が2人で異口同音に「あの、ママのうたう子守唄、イヤだったネエ、暗くて、淋しくて、本当きらいッ!!」。
これには驚いた。そうじゃなくても寝たくないのに、あんなに淋しい歌はない、というのだ。
そういえば、タケヤーサオダケ、という声がすると、おびえるのは知っていたのだから、思いをはせてやればよかったのに、悪かった、ゴメン。でも、『お猿のかごや』や『可愛い魚屋さん』『うさぎのダンス』じゃ眠れないでしょ。だから、月の砂漠をはるばると・・・とかマイナーな曲ばかり歌ったんだけど・・・。「あれもイヤだって!」上の娘は自分の娘にカラス何故鳴くの、の替え歌で寝かしつけ、下の娘は
ねむれ、ねむれ母の胸に
を歌っているそうである。