【15オピニオン面】
唄いつぐ−親から子へ
子育ての極意は「観葉植物のケア」
赤枝六本木診療所院長 赤枝恒雄(3)
私は、自分の子供に愛情を伝えられないことにもどかしさを感じる。照れもある。子供たちは冷たいお父さんだと思っているに違いない。
私自身、親から愛を感じ取った経験があまりない。「親から冷たくされた子供は、自分の子供に冷たく当たる」と書いてあった心理学の本を見てはっとした。
夜の東京・六本木で街角無料健康相談室を開いて七年になる。相談に来るのはフリーターやキャバクラ勤めの若者で、とりわけ女性が多い。私は親でもなければ学校の先生や友人でもないため、彼女たちは私に何でも話す。パクり(万引)、麻薬、レイプ、セックスの体験談で、いつも驚かされる。
彼女たちは一歳上、二歳上の先輩たちには敬語で話す。年の離れた私には“タメ語”だ。いつの間にか、私は彼女たちの間で「ツネちゃん」(本名は恒雄)のあだ名になった。
そのツネちゃんは最近、子育ての極意を悟った。“子供をうまく育てられない人には必読”という自信がある。子育ての極意は「観葉植物のケアなり」と心得てほしい。
- まず、買ってくるとき、見かけはきれいでも、売らんがために鉢の中にただ挿してあるだけのものがある。根が張ってないとすぐ枯れるから、植物を少し引っ張ってみるといい=見かけのよさは認めてもいいが、地についた仕事をさせ、少し負荷をかけてみる。
- 水は毎日、少量ずつ与える。長期旅行に行くときに水をまとめてやりすぎないこと。根腐れして枯れてしまう=お小遣いは必要な分だけ少量ずつ与える。一度に多額を与えると心が腐る。援助交際した子は心が腐って社会に適応できなくなる。
- 強い日差しには当てない。直射日光に当てると枯れてしまう=アダルトビデオやH本といった刺激が強いと性犯罪につながり逮捕される。
- 寒暖の差の大きい場所には置かない=温かい環境をつくって、伸び伸びと生活させる。
- 隅に置かない。水を忘れないために、部屋の目立つところに置く=子供にプライドを持たせる。堂々と自分の家だと思わせ、家に居場所をつくる。
- 植物に語りかけるほどのやさしさを心がける=子供たちとの会話が多いほど、性体験が遅くなる。
これが極意だが、何より大切なのが「子守唄」だ。子守唄は無限の愛を包括するか
ら、バランスのとれた人格が形成される。
故郷の徳島にも『美馬(みま)の子守唄』という寝させ唄があった。
守りが憎てか やぶれ 傘くれて
かわいいわが子は ぬれるのに ヨイヨコ
ねんね ねんねと 胴たたかれて
なんでねらりょうに
たたかれて ヨイヨコ
ぜひ、子供たちにそれぞれの子守唄を聴かせてあげてほしい。