よみうり寸評
<子守唄よ甦(よみがえ)れ>――大賛成だ。赤ちゃんの安らかな眠り、天真の笑顔は子守唄がはぐくむ。長く歌い継がれてきた子守唄を古くさいなどと言うなかれ◆子守唄は子育てのいろは。母と子、父と子のコミュニケーションの第一歩である。時代とともに三世代同居は少なくなり、家々で伝承する子育ての作法も失われつつある◆マニュアルや専門家への依存が増えて、子守唄は昔のようには歌われなくなってきた。そんな折、今月刊の<別冊「環」⑩ 子守唄よ、甦れ>(藤原書店)に共感した。鼎談(ていだん)や寄稿の数々が子守唄の有用、大切さを教えてくれる◆近ごろ笑わない赤ちゃんが増えてきた!という指摘にはギクリ。普段の声かけが少ないせいだという。児童虐待の凄惨(せいさん)な場は子守唄の安らかな世界とは対極にある◆世に当たり前のことが当たり前に行われなくなったのは「いろはカルタがすたれたからだ」というのは、ジョークめかした当欄の持論だが、その伝で言えば、子守唄がすたれれば、子育ては乱れる◆巻末に全国子守唄分布表。土地土地の伝承がしのばれる。
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