みんなでとめよう児童虐待
〜歯からわかる児童虐待〜
ご挨拶
未曾有の大災禍となった地震、津波、原発事故をもたらせた今年の春。
あれからの季節の巡りの何と早いことでしょう。
被災地、被害者の復興を目にできる日はまだまだ遠い事のように思われてなりません。
人の生死、命の大事さ、当たり前の日常の大切さ、それらがどんなに貴重で大切な宝ものだったか、とりわけ幼い弱い子供達への思いは誰もが気がかりで心配でした。
なのに、大災禍の中で姿を消したかに見えた「児童虐待」は減っているどころかますます増えているのです。
これはどうしたことでしょうか。
報道や記事にならないだけで、心の荒廃がますます私達にのしかかってきてしまったのでしょうか。
日本子守唄協会では虐待の本質や防止を様々な角度から身近に捉えていただくための活動をして参りましたが、今回はより具体的に歯科医師森岡俊介氏の虐待防止の取り組みをお話ししていただくことにしました。
そして、虐待児童の保護に従事し努力していらっしゃる藤澤昇園長、当協会会長で小児科医師でもある小林登東大名誉教授と「虐待をなくす」為の私達大人達の役目をしっかり討議したいと思っています。
いつ、貴方が、貴方の子や孫が虐待に会うか分からないという現実の中にいるのです。どうか我が事として、皆様でお誘い合わせの上、御足をお運び下さいますよう、お誘い申しあげます。
日本子守唄協会 西舘好子
みんなでとめよう
児童虐待
〜 歯からわかる児童虐待 〜
平成23年11月16日(水)
開場 18:00 開演 18:30
終演 21:00(予定)
一般 2,000円(テキスト代含む)
高校生以下無料
※ページ下方のフォームよりお申し込みください。
会場:深川小劇場 深川江戸資料館内
〒135-0021 東京都江東区白河 1-3-28
TEL 03-3630-8625 FAX 03-3820-4379
主催:NPO法人日本子守唄協会
後援:内閣府・厚生労働省・文部科学省・
東京都・子どもの虹情報研修センター
※この公演は、財団法人JKA からの競輪公益資金による補助金の交付を受けて、開催されます。
基調講演
「児童虐待の早期発見と防止のために歯科保健を知る」
〜歯科の役割〜
森岡俊介(森岡歯科医院院長)
シンポジウム
「みんなでとめよう児童虐待」
・コーディネーター
西舘好子(NPO法人 日本子守唄協会理事長)
・パネリスト
小林 登(東京大学名誉教授)
藤澤 昇(みちのくみどり学園園長)
森岡俊介(森岡歯科医院院長)
ミニコンサート
川口京子(歌唄い)
長谷川芙佐子(ピアニスト)
− 出演者プロフィール −
小林 登(こばやし のぼる)
東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長
1927年東京生まれ。東京大学医学部卒業。70年東京大学医学部教授(小児科学)。84年国立小児病院小児医療研究センター初代センター長。87〜96年国立小児病院院長。その間、臨時教育審議会委員、日本小児科学会理事、国際小児科学会会長など多くの政府委員、学会役員を務める。現在は、子ども学研究:Child Research Net 所長、日本こども学会代表、日本赤ちゃん学会名誉理事長等も努める。著書『こどもは未来である』『風韻怎思(ふういんしんし)− 子どものいのちを見つめて』『子ども学のまなざし』他
未来への警告
1960年代後半から70年代初めにかけて小児医療の現場に「子ども虐待」の症例が出始めてから、今日にいたるまで、ただの1度も、減った事はありません。
時代は確実に豊かになったというのに「なぜ?」と問いかけるばかりです。
虐待が増えつづける現状の中で、事件や事実の表面ばかりを見るだけではなく、その背景に秘められた意味を考え直視しない限り、未来を担う子どもたちの行く末には安心や安全という暮らしの基本となるものは無くなってしまうでしょう。
かつて外国人から羨望をもって見られた「礼節の国」としての日本。
その基本として、日本を訪れた人は、人々が子どもをいかに愛し大切にしているか、を挙げています。
その日本が近代化を成し遂げ、拝金主義、飽食、華美な贅沢を優先するあまり、精神文化の中に深く根ざした、他者や弱い者への慈しみや配慮といった「心」の有り様を、今はすっかり忘れてしまったかのようにみえます。
残念ながら、物質的な「豊かさ」故に起こる魂の売り渡しがこのまま行けば、虐待をなくすどころか、悪意と憎悪とを社会のなかで養い育てる子どもをつくる結果になるのではないでしょうか。
個人の中に眠っている「優しさ」をいま一度、呼び起こし、家庭、地域、社会が一丸となって、生きるうえで最も大切な人と人との輪の再構築が必要な時期がきていると思います。手遅れにならないうちに、今日のこの場から実りある提言が生まれ、みんなが「子ども虐待防止」への試みをしていくことを望みます。
日本子守唄協会会長 東京大学名誉教授 小林 登
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西舘好子(にしだて よしこ)
NPO法人 日本子守唄協会理事長
東京・浅草生まれ。1982年劇団こまつ座主宰、演劇のプロデュースを手掛ける。1985年、第20回紀伊国屋演劇団体賞を受賞。1995年スポーツニッポン文化大賞受賞。30年に及ぶ演劇活動、DV、子供の虐待、女性問題への活動などを経て、2000年日本子守唄協会設立。現在は女性史の一つともいえる子守唄に取り組んでいる。
いつになったら「虐待」はなくなるの?
瞬時に奪われた命、瞬時に日常を無くした人生、三月十一日の「東日本大震災」
は被災者のみならず私達の生活にどれほどの「冷水」を心身に与えたことでしょう。
自然災害とはいえ、あの日から本当に何かもが変わって見えるようになったのは事実です。
私も何度となく被災地に赴きその現状をつぶさに見てきました。
震災直後は電機も水道もガスも一切のライフラインが断たれ、真っ暗な闇のなかに小雪が舞っていました。かすかな懐中電灯の明かりを頼りに手を繋いだ親子が仮設トイレに連れ立っていく姿が印象的でした。二人の「手」はしっかり繋がれていました。
もうその手さえ繋ぐことの出来ない親子もいます。
多くの子供達があの津波の中に逝ってしまった今、その悲しみを生涯癒すことの出来ない親も沢山いらっしゃるのです。
「未来はこども自身のなかにある」
その命は再び返る事はない、子を奪われた親たちの慟哭を知って下さい。
「虐待」はこの多くの命の犠牲の時期にあってなお無くなるどころか減ることも止むこともありません。
「かけがいのない命」は「この子さえ居なければ」という悪魔の声と「欲の我」に負けて相変わらず続き数を増やしているのです。
「なぜ?」「どうして」を問う前に貴方の身近を見回して欲しいのです。
隠された悪行を大人達がみんなで束になって無くしたいという思いが無くてはなくなりません。
「その手」を母子の繋がれた手を離さないで。それを祈り、今日の会としたいとおもっています。
日本子守唄協会理事長 西舘好子
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森岡俊介(もりおか しゅんすけ)
森岡歯科医院院長、埼玉県立大学保健医療福祉学部講師、東京歯科大学講師
東京歯科大学大学院卒業。平成14年に、わが国で初めて被虐児の口腔内状況調査を実施。東京都エイズ専門家会議委員、東京都母子保健運営協議会委員、東京都板橋区児童虐待防止協議会委員等を務める。現在、ボランティアとして東京都児童相談センターにて被虐児の歯科健診と保健指導を行っている。<著書>『子どもの虐待(歯科との関わり)』、『歯科医師の児童虐待理解のために』、『「特集」どう関わるか−こども虐待』、他多数
みんなでとめよう児童虐待
〜歯からわかる児童虐待〜
森岡俊介
わが国では、少子化が進む一方で、地域社会の崩壊と格差社会による貧困など様々な要因で、子どもの虐待は増加し続けており、平成22年度には震災の関係で、宮城県、福島県、仙台市を除いて集計した結果でも児童相談所への相談件数は5万5千件余に増加しており、単純計算で毎日10分毎に1件以上の相談が上がっていることになります。実際には、児童虐待に関する窓口には、児童相談所だけでなく市区町村の保健所、警察などがあり、通報や相談は児童相談所の件数の2倍ともいわれています。
ところで、人が生きていくためには毎日口から栄養を取ることが必要になります。この口の中の状況は、その人の生活習慣を推察するための一つとして、極めて有効な情報源といえます。
お口の疾患の特徴としての代表的なむし歯や歯周病は感染症であり、一度罹患すると自然治癒しない、放置すれば増悪傾向をたどる、治療結果が明白に残るなどの特徴があります。一方では、むし歯や歯周病は予防や長期管理が可能です。このため、よい生活環境の下では、歯科保健の知識があれば誰でもむし歯や歯周病は発生しにくく、快適な口腔環境でしっかり栄養を取っていくことができます。ご自身で体験できるお口の快適性を経験することは、ご家庭での生活習慣の改善や良い習慣の維持となることにつながります。
このことは、お口の状態を通じて、虐待にあっている子供の早期発見をすることや、育児において、養育者の精神的負担の軽減を通じて、子どもの虐待の予防のために、歯科関係者だけでなく住民の皆さんが歯科保健の知識を知っていただくことが重要です。
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藤澤 昇(ふじさわ のぼる)
社会福祉法人岩手愛児会会長、みちのくみどり学園園長
平成5年みちのくみどり学園園長に就任。平成17年より社会福祉法人岩手愛児会会長を兼務。平成11年より社会福祉法人まきば会理事。みちのくみどり学園での職員と子どもたちを写し撮ったドキュメンタリー映画「葦牙(あしがび)」上映を契機として児童虐待防止活動に積極的に参加している。虐待をうけた子どもたちの生命力と心の成長の具体的な話は、説得力に満ちて深い共感を与えている。
みちのくみどり学園園長 藤澤 昇
大震災を乗り越える子ども達
東日本大震災は多くの人々の安全・安心を一瞬にして奪ってしまった。今でも続く筆舌に尽くし難い人と物の無残な痕跡を残して。
盛岡にある学園も今までに経験の無い建物の揺れを経験した。私は丁度高校生と予てからの約束の束の間のドライブを楽しんでいた。
携帯が非常音を発し車を三陸方面に向う国道の路肩に停めた。前方斜めの八階の大きなビルが揺れ動き、停止した車上で宮古方面を示す道路標示が車に落下しそうになり、思わず助手席に居た高校生を手でかばった。
「やばくない」と彼女。「やばいよ。直ぐ学園に戻ろう」と既に信号停止の道路を急いで学園に戻った。既に子ども達は職員と一緒に外に避難をしていた。地域の学校から下校した子ども達もその輪に入り秩序正しく点呼が行なわれ人員が確認された。
そのまま部屋に戻ろうとしたらまだ余震が続き、特に幼児さんたちが怯えた表情で職員の手を話さなかった。午後4時を回り薄暗く寒さが増してきた。園内ではなく隣の支援学校の体育館に全員避難することを決めた。
体育館では卒業式を控えそれ様に会場が整備されていた。それを全部解除して避難所にした。施設開設以来の避難所の生活である。
学校の先生方は毛布やダルマストーブを用意してくれた。暗い体育館は余震で屋根や窓ガラスが揺れ軋む音のなか、高校生の男女が幼児の皆さん一人ひとりに寄り添い、語りかけ抱っこをしていた。(これは子守唄だ)
被虐待児とか何とか、と子ども達をみるときがある。その子ども達と施設生活でいろいろと格闘もしてきた。でもこの修羅場での光景で何もかにも吹っ飛んだ。これが人間なんだなぁと。優しさなんだなぁと。(素直にそう思った)
あれから1ヶ月経たない4月の初旬に、子守唄協会の西舘代表から連絡があった。お見舞いの言葉より先に、「何か必要な物は!。何でもおっしゃってください」と。東京からの電話が身近に温かく頼もしく感じた。
後日直ぐに義援金と生活物資が届いた。見知らぬ多くの方々の激励の言葉が添えられて。
想像に溢れる思いやりを有り難く頂いた。
この時から私たちに出来るその思いやりを、今度は被災地のど真ん中にしようと決意した。
ふと、この大災害の最中に深刻な児童虐待が進行している事実を憂慮している。
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川口京子(かわぐち きょうこ)
歌唄い
子供の頃、上野耐之氏から歌を教わる。早稲田大学第二文学部中退。日本歌曲、童謡、唱歌、抒情歌、民謡、子守唄、などを中心に活動。「北原白秋を唄う」「野口雨情を唄う」「日本の唱歌」「戦後のこどものうた」「歌でつづる日本の自然」「母」といったテーマでソロコンサートを行なう他、阪田寛夫氏、小島美子氏、松永伍一氏とのレクチャーコンサート等に出演。言葉と情景が伝わる歌手として全国に多くのファンを持つ。1999年度日本童謡賞特別賞受賞。
http://www.kawaguchi-kyoko.com/
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長谷川芙佐子(はせがわ ふさこ)
ピアニスト
国立音楽大学ピアノ科卒業。童謡歌手、声楽、器楽、合唱の伴奏者として、数多くの演奏会、放送、レコーディングに演奏、編曲で参加。テレビ朝日「題名の無い音楽会」「北原白秋童謡フェスティバル」、日本童謡協会およびテレビ朝日主催「全国童謡歌唱コンクール」の公式ピアニスト、ほか。クラシックからポップス、民謡などオールラウンドプレーヤーとして活躍中。クリアな音色と多彩なアレンジが好評。参加CD:世界のこもりうた(opus55)、チェロとピアノで奏でる日本の四季〜唱歌編(opus55)、月(コロムビア)赤とんぼ三木露風童謡詩集(ネット武蔵野)、ほか。
http://www.k-create.info